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「武漢からの女性が肺炎、コロナかも」…北海道初の患者受け入れ、緊張が走った - 読売新聞

 北海道内で初めて新型コロナウイルスの感染者が確認されたのは、昨年1月28日。中国・湖北省武漢市から旅行中の40歳代女性だった。治療にあたった市立札幌病院(札幌市中央区)の向井正也院長らが取材に応じ、当時の緊迫した状況を証言した。1年を経て、治療の経緯、事前の準備や訓練が功を奏したことが明らかになった。(中尾敏宏)

 「武漢からの女性が肺炎だった。コロナかもしれない」。昨年1月27日午前11時頃、札幌市保健所から市立札幌病院に連絡が入った。患者の受け入れを要請する内容だった。病院では数日前、新型コロナの感染者の受け入れを想定し、感染症病棟の担当者や病院幹部で対応を協議したばかりだった。

 「いくら準備していても未知のウイルス。感染防御の手順を間違えれば、スタッフに感染してしまうこともある」(向井院長)。現場のスタッフに緊張が走った。患者の女性は同日午後2時頃、感染症病棟の一室に運び込まれた。

 道などによると、女性は21日に来日し、都内に滞在後、22日から友人ら2人と道東などを旅行した。JRで札幌市に移動した26日夜から発熱やせきの症状が出た。外国人患者の受け入れに積極的な市内の総合病院でレントゲン検査を受け、肺炎像が確認された。

 感染症指定医療機関である市立札幌病院への入院が決まり、28日には国立感染症研究所(東京)での検査で陽性と判明。道は「道内初の感染」と発表した。

 女性は入院当初、38~39度の熱があり、血液中の酸素濃度が低下したため、一時は酸素マスクが必要になった。意識は鮮明で、感染症内科の医師が解熱剤などを処方すると、順調に回復していった。

 現場で対応にあたった看護師の土佐理恵子・感染管理担当課長は「(女性は)理解力があって、自分自身が何をしないといけないかわかってくれた」と振り返る。コミュニケーションはうまく取れた。病院食の煮物が口に合わず、看護師が女性の希望で、コンビニエンスストアの中華料理を買ってきたこともあった。

 意思の疎通で問題が生じなかったのは、事前準備のたまものだった。市立札幌病院は道内の中国人観光客の増加などを受け、3年ほど前から中国人が感染症に罹患りかんして入院するケースを想定し、タブレット端末の翻訳機能を使って問診や採血を行う訓練を行ってきた。

 向井院長は訓練や実際の対応を振り返り、「やりすぎだった点はあったが、足りない点はなかった」と語った。

 女性の容体は安定していたが、道内で初めて確認された新型コロナ。市中感染が懸念されるなか、行動歴を調べたのが、医師の資格をもつ札幌市保健所の山口亮・感染症担当部長だ。

 山口部長は学生時代に2か月間、中国を旅行し、日常会話レベルの中国語を話せた。言葉が通じない異国の地で感染し、ベッド2床の病室で一人、横たわる女性。山口部長は「緊張感がひしひしと伝わってきた」と話す。

 何度も病室を訪れて中国語で会話し、学生時代の武漢旅行の話も交えて打ち解けていった。通訳を介して聞き取り、女性が発症後は外出しておらず、旅行中もマスクをしていたことを把握。市中感染の恐れは低いと判断された。

 女性は2度連続で陰性と確認され、2月14日に退院。担当した看護師に日本語で感謝の言葉を記した手紙を残し、帰国した。

 市立札幌病院は、新型コロナの感染者延べ656人(27日現在)を受け入れてきた。土佐課長は「最初の女性にしっかり対応できて、スタッフが誰もコロナを理由に辞めることなく、対応を引き継げている」と話す。市民らからの励ましの手紙が力になっているという。

 向井院長は「我々は一致団結して乗り切ってきた。道民の皆さんが昨年と同じように行動すれば、また同じような感染の波がやってくる。感染予防に十分に注意して生活してほしい」と力を込めた。

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