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WHOから突然の電話「新手の詐欺かと」…「ナッジ理論」で注目 - 読売新聞

 昨年7月、世界保健機関(WHO)のホームページに、兵庫県尼崎市内の商店街の写真が掲載された。WHO西太平洋地域事務局から、「新型コロナウイルス対策の一例として紹介したい」と市役所に打診があったそうだが、なぜ、国際機関が尼崎の下町に注目したのだろうか。(上野将平)

 「電話でWHOだと言われて、最初は新手の詐欺かと疑ったんです」。応対した尼崎市こども青少年課係長の江上昇さん(43)は明かす。「まさか、尼崎を世界レベルで扱ってもらえるなんて」

 WHOのページに載ったのは、阪神尼崎駅に近い三和本通商店街の精肉店「肉福」の店頭などの写真2枚。店では、客が地面に貼られた足跡マークにあわせて間隔を空けて並び、説明文に、「新型コロナウイルス感染拡大下での『ナッジ』理論の活用例」として「商店で自然と距離を置く環境が作り出されている」とある。

 ナッジ理論とは何だろう。

 「望ましい行動に導く仕掛けです」。市道路維持担当係長の柏木洸一さん(36)が教えてくれた。

 例えば、男子トイレで小便器に「的」や「虫」のシールが貼ってあると、つい狙いたくなる。その結果、便器や床が汚れにくくなり、掃除の手間が省けて、経済効率が上がる。これが、ナッジ理論の応用例だ。

 ナッジは、「ひじで軽くつつく」という意味の英語で、理論は米国の行動経済学者が提唱している。人々に自発的な行動を促し、国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)の達成や行政コストの節約につながる手法として関心が高まり、環境省や横浜市には専門の職員チームがある。

 尼崎市も2019年10月、ナッジ理論を実践する職員チーム「ナッジ・ユニット」(10人)を結成。江上さん、柏木さんもメンバーだ。「肉福」では、「足跡マークがあれば、客はそこに立ってしまうはず」と、コロナ対策で社会的距離を取ってもらうため、20年4月に設置した。店の新崎成代さん(59)は「みんな行儀よく並んでくれて、びっくり。市のアイデアに救われたわ」と喜ぶ。

 WHOの職員が、ナッジを使ったコロナ対策の好事例を探していて、インターネット上で「肉福」の写真などを見つけ、市に写真提供を依頼し、「世界発信」につながったという。

 三和本通商店街では、自転車で走り抜ける危険な行為の抑制にもナッジを活用。「押しチャリ」(自転車を押して歩く行為)を勧めるため、商店街の入り口などに「ここから押してね」「押してくれてありがとう」などと書いた大きなシートを地面に貼った。

 商店街振興組合副理事長の鶴留朋代さん(52)は「こっちも世界から注目されたら、ええのになぁ」と願う。

 市では他にも、ごみのポイ捨て対策で「不法投棄 防犯カメラで 特定中」とリスクを警告する看板を設置、不法投棄の減少につなげたケースなどがある。

 ただ、失敗もある。コロナの感染予防を意識してもらおうと、市庁舎のトイレの洗面台に「となりの人はせっけんで手を洗ってますか?」と掲示。「互いを監視しているみたいで不快だ」と批判され、撤去したという。

 江上さんは「うまくいかないこともあるけれど、お金をかけずに成果を出せるのは、やりがいがある。人の心を動かす方法を考えていきたい」と語る。市民生活を豊かにしながら、「Amagasaki」を世界に発信できる第2、第3のユニークなアイデアが生まれることを期待したい。

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